自己紹介:児玉敬(事務局長)

児玉敬と申します。

私は40代のFTMで30代からホルモン治療を行っています。今は、一部役職者や人事の方にご説明して、本来の性別は伏せた状態で働かせていただいています。

私は治療の開始が遅かったですが、その分「性別」について色々考え感じることがありました。

一当事者として、手術要件の維持など会の趣旨は社会的に妥当な範囲のものと感じ、賛同しています。また、当事者としても重要なものと感じます。


まず、ごく簡単にですが、子どものころから今に至るまでを書かせていただきます。

私は子どものころは自動車の絵ばかり描いていたようです。小学校の前半までは、帰宅後などに弟や近所の子たちとやんちゃに遊んでいました。スカートを嫌がる子でした。(当事者でなくてもあるかもしれませんね)

ただ、FTMにありがちな「男子と思っていた」というのは自分にはあまりなく、男子の中で遊ぶ中で自分が女子であること思い出すと「自分は男なのか女なのか」と思っていました。

思春期以降は女性らしい体型や骨格、声などへの不快な違和感を持つようになり、性別違和を避けるための工夫は自然としてしまい、20代の前半にはいつの間にか女性トイレで男性に間違われるようになっていました。

治療を始めるのは30代と随分遅くなりましたが、ホルモン治療を始めてからは随分楽になりました。ただ、今も顔や腰の骨格はやはり日々気にしてはいます。多少、声や筋肉で見せかけて意識しないで済んでいるだけなのだと思います。

また、男性として男性の中で生活していると、違いが一層顕著に分かるので、筋トレや胸オペ、SRSの必要性は日々実感するばかりです。


特例法の手術要件撤廃を求める声についてですが、FTMとMTFだと事情は違ってくるところもあるかとは思いますが、自分の経験から簡単に思うことを書かせていただきます。

セルフID的な話としては、実のところ私も未治療の悩んでいる最中「女性と言わないでほしい」「男性として扱って欲しい」と思っていなかったとは言えません。

しかし、性別はありとあらゆるところにあり、人は瞬間に性別を判別しているのであり配慮には限界があります。

思い出せば、治療前までは自分の性別を思い出す瞬間は正直かなりつらかったです。ごく身近な人たちに助けてもらう(少し忘れていられるよう配慮など)のはありなのかな…と思ったことはありますが、セルフIDは社会制度を変えようという話なので、言い方は悪いですが、そこまで来ると自分だったら「裸の王様」のように感じて余計辛く感じそうです。

また、表面上望む性別で認識され、生活しているケースで手術要件に制限されたくないというケースもあると思うのですが、生殖機能を維持している以上、妊娠させる・妊娠する可能性を維持しているわけで、そこを無視するというのはいくら何でも無理があると思います。

正直、手術要件撤廃を無理筋と考える当事者も多いと思うのですが、当事者は(本来の性別と思う)望む性別へ埋没したら当事者であることをできるだけ忘れたい人が一般的ではないかと思うと、この問題については今まさに悩み深い人たちが発信することが多いわけで…。

性別は奥が深いです。治療の前後でも考え方がぐるりと変わるような瞬間や、移行後になって見えることもありました。

「手術要件撤廃を批判する当事者たちというのは、既に助かった人たちだからだ!」といった感じの人の良心につけ込むような批判を見かけたことがありますが、自分たちが歩んできた過程で感じたことや今も苦労しているところから気付くものがあって、だから発信している人がほとんどではないでしょうか。

一緒に声を上げてくださる当事者が増えたら、心強く嬉しい限りです。